2020年度 理事長所信並びに基本方針



第63代理事長 矢野元英

「 想いをカタチに 」
〜実践と成長を繰り返す持続可能な組織を創りあげよう〜

はじめに

さかのぼること56年、毎年10%を超える経済成長を達成していた高度成長期の真っただ中にアジア初のオリンピックとして東京オリンピックは開催されました。来るべき平和の祭典を前にビルや道路、あるいは新幹線の建設ラッシュで我が国は大きく姿を変え、近代的な工業が産業の中心となり、技術革新と設備投資が進み、国民所得倍増計画の中、国民の生活水準は大きく向上しました。半世紀前に開催された東京オリンピックはすべての国民を熱狂させただけではなく、戦後からの脱却と日本の先進国入りを全世界に印象付けた大きな契機となったのです。とどまることのない技術の革新により私たちの生活は、半世紀前からでは想像もつかぬほどの劇的な利便性と物質的な豊かさを手に入れました。一方でバブル崩壊以降、経済は停滞し著しい少子高齢化の進展と相まって閉塞感がぬぐえず、可処分所得も伸び悩む中で国の債務も増え続けており、手をこまねいていれば国民の生活水準を維持し続けることすら困難な状況に陥りかねません。我が国は今、存亡の危機といっても過言ではないほどの大きな岐路に立たされているのです。

我々、青年会議所の目指す目標は「明るい豊かな社会の実現」であることは言うまでもありません。ただし、戦後、食べ物も衣服も十分に揃わない時代と、物や情報に溢れている現在の物質的状況や価値観は明らかに異なっており、「明るい豊かな社会」の意味や着地点は変化しているかもしれません。しかしながら、いつの時代においても変わらないものがあるとすれば、それはより良い社会を作り上げようとする青年たちの存在でしょう。歴史を顧みれば、時代が大きく変わるとき傑出した青年が凄まじい熱量をもって周囲の意識を変え、この国を動かす原動力を生み出してきました。また、ここ鹿島の地においても郷土の振興を担う青年の育成に尽力し「青年団の父」と称される田澤義鋪をはじめとする多くの偉人や先輩諸兄を輩出しています。そのような風土・気風・つながりの中で人間性や精神性が育まれてきたことに誇りと矜持を持ち、我々が率先して鹿島の地から行動を起こしましょう。創設以来脈々と受け継がれた「奉仕・修練・友情」の三信条を胸に、市民意識変革団体として志を同じくする多くの仲間たちとともに、人々が漠然と抱く未来への不安や危機感、さらにはオリンピックがもたらす熱狂をより良い未来を創造するための実践へと昇華させるべく弛むことなく運動を推し進めましょう。

持続可能な組織運営を考える

鹿島青年会議所は設立以来、60余年にわたり明るい豊かな社会の実現のために運動を続けてきました。かつて鹿島青年会議所に所属し熱く運動を展開された先輩方の努力は、故郷鹿島の発展に大いに寄与し、組織の社会的な信頼が築かれました。そのおかげで、我々が明るい豊かな社会を実現すべく行う運動は、市民からも受容されやすいという大きな利点を有しています。しかし、社会や環境、価値観、あらゆるものが激変していく中で、今後ともその利点を大いに生かして社会に貢献し、志高い青年経済人に成長と発展の機会を与え続けていくためには組織の変革は必要不可欠です。

会員数も30名を切り、例年通りに組織を運営することすらままならない状態が続いている中、未来を見据えた持続可能な組織を構築するために重要なことは、会員拡大の推進はもちろんのこと、会員のエンゲージメントを高めることです。そのためには、組織と会員、あるいは会員同士のつながりをより強固なものとするとともに、やりがいや成長を実感する機会を創出することが必要です。まずは、鹿島JCに所属している会員一人ひとりを今まで以上に知り、つながりを育む実践を日々の活動で行っていきましょう。また、会員は仕事や家庭や環境も様々であり、彼らに対する理解と信頼関係がなければ、組織の中で役割を与えることができません。それは成長の機会を失うことと同義です。特に長のつく役職にある会員には、成長の機会を提供するという意味において、失敗を恐れず覚悟をもって自分の責任の一部をフォロワーに任せることが組織運営上期待されます。同時に、フォロワーにおいては、一丸となって事業を作り上げ運動を拡大していくことが、自身の成長とつながりを育むことと同義であることを自覚し、任された仕事は責任をもってやり遂げる姿勢を示して欲しいと願います。そして、例会・理事会はもちろん、委員会の開催にあたっても、一人でも多くの出席を求めるとともに運営や企画をおろそかにすることなく、単なる数合わせ・顔合わせの場ではなく、コミュニケーションや相互理解を促進する学びの場としての意義を浸透させます。

また、我々はJAYCEEであると同時に青年経済人として企業を牽引する存在でなければなりません。激変する情勢の中、それぞれのビジネスも大きく変化することを強いられており、会員各位が多忙な日々を送っていることは想像に難くありません。時間は有限で巻き戻すことはできません。限られた時間で最大限の効用を生み出すためには、速やかな意思決定と迅速な行動、それにかかる組織運営の変革も必要でしょう。もちろん、青年会議所として変えてはならない決まり事もあります。不易流行の精神をもって優先すべきことは何か、重要なものは何かを見極め、ときには文明の利器を積極的に活用しながら無駄や非効率を排除して、実践的な青年の集う機動的な組織を創り上げましょう。

おもしろいを伝える会員拡大

平成30年の内閣府による「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」によれば、ボランティア活動に対する興味を日本の若者に聞いたところ、「ある」と答えた割合は 33.3%、「ない」と答えた割合は48.1%で約半数を占め、平成25年の調査よりも「ない」と答えた割合が6.2ポイントも上昇しています。これは純粋に社会貢献を行いたいという若者が減少していることを表しており、人口や事業所の減少に伴い入会候補者も減少傾向にある状況下で会員を拡大し続けるのは容易なことではありません。しかし、このまま会員数が減少を続ければ、今後展開する運動にも大きな制約が発生します。それどころか組織存続の危機に陥りかねず、会員拡大は会員全体で取り組む必要がある喫緊の課題であるとの認識を共有し、実践していかなければなりません。

会員を拡大するためにはJCに興味がない人の心を動かさねばならず、それは市民意識変革団体である我々にとって根幹的な運動であり、JC運動を今まで以上に力強く推進していくために欠かすことのできない取り組みです。では、実際にどうやって拡大を進めていくのかを考えたときに私が重要だと思うのは、JCのおもしろさを誠意をもって伝えることだと考えます。ただし、我々自身が日々の活動や運動におもしろさを感じていなければ、それを他者に伝え心を動かすことは難しいでしょう。他者の意識を変革するには、まず我々自身が変わることが求められるのです。鹿島青年会議所に所属する会員全員に日々の活動や運動に対しておもしろさを実感してもらうためには、メリハリのある運営を行い、会員の相互理解を促進し組織内の雰囲気をより良くする必要があります。同時に、適切に責任を委譲しながら会員が一丸となって事業を構築し実践することで、やりがいを創出していくことも重要です。もちろん、打率が上がっても打席が少なければヒットの数は増えません。とにかく足を使って、一人でも多くの候補者に接触することも欠かしてはならない取り組みです。会員一人ひとりがそれぞれのつながりを活かし可能性のある若者をリサーチし、役割を分担しながらアプローチをかけ、一人でも多くの青年にJCのおもしろさを伝え、運動の輪を拡げていきましょう。

希望をもち、仲間とともに未来を切り拓く青少年育成

未来を担う青少年の健やかな育成は、いつの時代においても地域の発展の根幹をなす重要な課題であり、明るい豊かな社会へつながる欠かせない運動の一つです。我々青年会議所はこれまでに数多くの青少年事業を企画、実施し成果を上げて参りました。そして、鹿島青年会議所運動指針にも謳っているように、これからも継続して取り組むべき運動の柱です。

10年後、20年後、社会構造や技術の進歩により現在からは想像がつかないほどの大きな変化を遂げるでしょう。そして、それは良いことばかりではなく、ときに大きな困難や苦痛を伴う変化かもしれません。そのような中で時代の中核を担っていくのは、現在の青少年たちにほかなりません。避けられない事実を前に、備えておかねばならない能力や素養は数多くありますが、とりわけ重要なことは、どのような状況にもめげずに希望を持ち続けることと、周囲と協調し助け合うことのできる精神性を育むことだと考えます。希望は困難な状況に立ち向かうために己を奮い立たせる動機となり、ひとと協調し手を取り合うことは大きな壁を乗り越えるための揺るぎない力となるはずです。そこで本年度は、青少年に日常では体験しえない大きな壁を乗り越える機会を提供します。自問自答しながら考え抜き、手を携え協力しながら課題を解決する。その成功体験が、自信と共助の精神を育み、希望を持ち仲間とともに未来を切り拓く青年経済人の土台となるはずです。

また、青少年期は多感であり多くのことを吸収し成長しながらも、将来に対しての期待と不安が入り混じる時期でもあります。そのような大事な時期だからこそ、責任世代の青年経済人として、次代の担い手となる青少年に対して社会性や地域のつながりなど実社会で大切なことを自身の経験を交え伝えていかなければなりません。教育機関や行政や他団体と連携し青少年の気持ちを汲み取り自我を尊重しながら、自身の将来に夢と希望を抱き豊かな人生を歩んでもらうために語りかけてまいりましょう。そして、青少年だけでなく私たち大人もこの機会の中で青少年たちと真剣に向き合い考えることで、新たな学びを得ることができ、お互いの成長に相乗効果をもたらすことができるはずです。

時の流れは止めることができず時代は変化し続けます。そのような中でより良い未来を創造するには、ひともその変化に対応し、挑戦を続けなければなりません。厳しくも可能性に溢れた未来をより良いものにするために、希望を持ち、つながりを重んじ、挑戦する人を後押しできる青少年の育成を行ってまいります。

ひととひととがつながる持続可能なまちづくり

60余年にわたる鹿島青年会議所の歴史の中で、先輩方は時代と向き合い、このまちに何が必要かを真剣に議論し、情熱をもって運動を続けてこられました。その中で情熱や想いを行動に移し、本気で取り組んだからこそ市民や行政を動かし、このまちの発展に貢献し組織の社会的な信頼を得て、今もなお明るい豊かな社会を実現すべく運動を続けています。他方、60年以上まちづくりを続けてこられたのは市民や行政との協働の賜物であることも忘れてはならないことです。そして先輩方の背中にならい、今もなおまちづくりに励み、このまちに影響を与え続けていることは誇るべきことです。

しかし、国立社会保障・人口問題研究所によれば、我々が住み暮らす鹿島市の人口は2040年には22,600人になると予測されています。このままでは20年の間に20%を超える人口が減少し、それに伴い生産や消費も逓減することが予想され、まちの活力が失われる可能性があります。青年経済人の集うまちづくり団体である我々は、この課題と真摯に向き合い打開策を模索し、地域独自の魅力や資源、特色を有効的に活用しながら社会を変えていかねばなりません。もちろん、それは我々だけで成しえるものではありません。これまでに培われたまちづくりの経験や青年会議所の社会的な信頼を存分に活用して、市民の意識を変革し、このまちに関わる全てのひとが自分たちのまちは自らで創るのだという当事者意識を醸成する必要があります。

鹿島のまちづくりを先導するうえで大切なことは、地域の魅力や資源、特色に関して理解を深めると同時に潜在的な地域の課題を掘り起こすことです。そして、団体や行政とまちづくりに対する情熱や危機感を共有し、並行して情報の収集にも努め、まちづくりを志し、協力を求めるひとや団体があれば胸襟を開き協調する必要もあります。さらに協働して、市民がまちづくりについて学び、考え、実践する機会を創出することで、市民の当事者意識を喚起します。

まちづくりで自分たちの生活が豊かになる。まちづくりでこのまちが暮らしやすくなる。まちづくりでこのまちが賑やかになる…まちの変化は「まち」という大きな母体だけでなく、そこに暮らす一人ひとりの生活にも確実に影響を及ぼします。我々は故郷のまちづくりの先導者として声を上げ続け、積極果敢に新しいパートナーシップを築きあげ、持続的に発展し続ける地域を創造すべく運動を行ってまいります。

目的意識を持った出向ならびに参画

出向や各種大会への参加・参画は、青年会議所に所属するすべての会員に開かれたLOMの垣根を越えてJC運動のスケールを体感できる大きな機会です。そして、そこでは志を同じくする広域的な同志との出会いやスケールメリットを活かした事業構築など、多くを学ぶことができます。そしてLOM単位の活動や運動では見えないであろう社会問題とその解決を通じて、自己の成長を遂げることが可能です。さらに、自己成長を遂げた人材が、その学びをLOMに還元することで組織や地域に更なる進化や変革をもたらします。このような好循環を確立し、つなげていくことは明るい豊かな社会の実現のために必要不可欠なことです。しかし、ただ漫然と参加・参画をするのでは機会を成長につなげることはできません。そこで本年度は、地区・ブロックを含めた日本青年会議所の取り組みをいち早く共有し、目的意識や学ぶ姿勢をもった出向や各種大会への参加・参画を推進します。

また、我々鹿島青年会議所は「鹿島市桜樹保存会」、「鹿島ガタリンピック」、「鹿島おどり」という3つの継続事業に参画しています。そのいずれもが、先輩方が地域をより良くするために心血を注いで作り上げられ、今では多くの市民が集い、まちに活力を与えるイベントへと成長しました。そして、運営にあたっては我々だけでなく市内の他団体や市民が協働して成り立っています。それを運動の発信の場として、あるいは志をともにできる新たな仲間を発掘する場としてとらえましょう。継続事業への参画は、直接的に地域に貢献しながら我々の運動の輪を一層拡げていく好機です。その認識を会員全体で共有し、地域への貢献はもとより新たなつながりを創造し、運動の輪を拡げるべく参画を行ってまいります。

結びに

鹿島青年会議所会員には皆、胸に秘めた熱い想いがあることを私は信じています。しかし、秘めているだけでは何も変えることはできません。市民の意識を、ひいては社会全体を変えていかねばならない我々だからこそ、先ずは自分自身が変わらねばなりません。そして、会員全員が胸に抱く熱い想いを言葉や行動といったカタチにして運動を発信し続けましょう。志を高く持ち、失敗を恐れず実践しましょう。思うような成果が残せずとも落ち込むことはありません。それは会員自身の成長の糧となり、将来運動を行う誰かの成功の鍵となります。明るい豊かな社会の実現のために全力で考え、取り組み、運動に費やした時間や労力は必ず報われる日が来ます。厳しくも可能性溢れる未来をより良いものにすべく、世のため、人のため、仲間のため、そして自分のために我々が信じる運動を力強く推進してまいりましょう。

《基本方針》



2019年度理事長所信