2019年度 理事長所信並びに基本方針



第62代理事長 藤永洋平

「 戮力協心 」
〜新たな一歩を踏み出す勇気と信念を胸に〜

はじめに

自分を育んでくれた故郷のために、これからの生涯を過ごすこの鹿島のために何ができるのだろうか。2012年11月、5年ぶりに鹿島へ戻った当時に漠然と抱いていた私の率直な思いです。

父が事業を興し、それを承継するに必要な知識を身につけることを目的に、私は東京の企業で5年間の修行期間を過ごしました。煌びやかな都会の喧騒に包まれて過ごした時間は、まだ若かった私に多くの刺激を与え充実した日々をもたらしてくれました。しかし同時に、慣れない土地での生活は寂しさを感じる時間もあり、その度に脳裏に浮かんだのは懐かしい故郷の風景でした。そして私は、募る望郷の念と冒頭の想いを胸に鹿島へ戻ってきたのです。帰郷して2ヶ月後、私は鹿島青年会議所とのご縁を頂き入会を決意しました。当時の故郷に対する心境を思い返すとある意味では必然の縁で私のJAYCEEとしての時間はスタートしたようにも思えます。そして、入会から7年の歳月の間に楽しさばかりではなく、鹿島の未来を真剣に想い熱く語る先輩の方々から多くの刺激を受け、様々な経験や学びを積み重ね、本年度は理事長の重責を担わせて頂きます。

昨年度、鹿島青年会議所は創立から60周年の節目の年を迎えました。創立60周年記念式典では、先人の故郷に馳せる熱い想いと弛まぬ努力によって今日の礎が築かれ、私たちには地域からの大きな期待と負託が寄せられていることを再確認する機会となりました。また、地域に根差す組織として、故郷のさらなる発展を願い、変革の能動者たらんとする気概と覚悟を胸に「明るい豊かな社会」の実現へ向けて新たな運動指針を発表しました。そして、その運動指針の実行初年度となる本年度、「戮力協心(りくりょくきょうしん)」をスローガンとして掲げました。戮力協心とは、全ての人の心と力を一つに合わせて物事を行うことです。私は、会員全てがその気持ちを持って何事にも積極果敢に挑戦することができれば、未来に向けた力強い一歩が踏み出せると信じています。私たちを取り巻く環境は変化しており、柔軟な対応や変化を求められる場面も多々あります。しかしながら、LOMに息づく創始の精神と理念、揺るぎないJAYCEEとしての誇りと自覚は普遍的でこれからも変わることはありません。本年度は、私たち鹿島青年会議所の普遍的な精神と戮力協心を最大限に発揮して、故郷の希望溢れる未来の創造に向け取り組んで参ります。

心と体が調和した青少年育成

いつの時代も子どもの存在は希望の象徴であり、未来そのものだと思います。まちづくりの観点からも青少年の健全な育成は切り離せない重要な課題であり、青年会議所における取り組みの大きな柱の一つです。私自身もこれまでに、青少年育成の事業に関わり地域の大人として、責任世代として考えるべきことを学んできました。そして、私は昨年の8月に待望の長子を授かり、遂に親として子育てを学び始めたところです。

戦後から今日に至るまでに日本では、食べるものに恵まれ食文化の欧米化や医療技術の進歩も相まって子どもの発育や肉体的な成長の面においては世界的にみても恵まれた環境にあります。しかし一方で、時代やライフスタイルの変化とともに子どもを取り巻く環境は大きく変わり、精神的な心の成長の面においては次から次に新たな課題が山積している現状があります。科学技術の進歩によって、ありとあらゆる情報を指先一つで容易に得られるようになり、労することも経験することもなく間接的に知識が手に入るようになりました。利便性や効率の面を考えるとその恩恵を否定できませんし、その流れに逆らうという選択肢は現実的ではありません。しかし、心と体の調和がとれた子どもたちの健全な育成、心の成長を考えると大人として考慮しなければならない側面があるのも事実です。

核家族化が進み、地域のコミュニティもこれまでと比較すると乏しさを増している傾向にあります。先述した科学技術の発達も併せて考えると、今の子どもたちには故郷や人との関わり、そして様々なことを実際に経験する機会が圧倒的に不足しています。こういう時代だからこそ、私たち大人がより一層意識的に様々な経験の機会を提供しなければならないと考えます。故郷への関心向上を促し、地域の多くの世代とのふれあいをもたらし、健全な経験の機会を与えることで、多感な子どもたちの感性に良質な刺激を与えてあげなければなりません。子どもたちの感性を磨き、心と体が調和した人間性を育むことで地域の明るい未来が拓かれると確信しています。

そして、我々は創立60周年の運動指針の中で「たくましさと思いやり溢れる次代の担い手を育成し、未来へとバトンをつなぎます」と宣言しました。地域に根差し「まちづくり」そして「ひとづくり」を行う青年会議所として、青少年育成に関わる運動と意識を他者へ伝播することで連携を生み出し、地域における一体的且つ持続的な取り組みのサイクルを定着させなければなりません。会員一人ひとりが周囲に対して積極的に戮力協心を働きかけ、地域の豊かな未来へ向け歩みを進めます。

未来を切り拓く人材育成

青年会議所は“まちづくり”の組織です。そして、その“まちづくり”には、必ず行動する人の存在が必要であり、人の力なくしてはまちの発展はありません。“まちづくり”は“ひとづくり”であり、“ひとづくり”は“まちづくり”なのです。近年、鹿島青年会議所の会員構成は入会して間もない会員の比率が高くなっています。この状況は、新たな人材によって未知のアイデアが生まれる可能性を秘めており、組織としても大きな伸び代があることだと考えます。だからこそ、“まちづくり”に欠かせない“ひとづくり”へしっかり注力していくことは組織の責務であり、地域の未来に対しても急務の課題であると考えます。青年会議所は、青年期における自己成長を図る上での学び舎だと例えられます。日々の活動を通して仲間と切磋琢磨していくなかで、一人では決して得られない成長を得ることができるのです。人は人によってしか磨かれず、人としての力と心を磨き合える環境が青年会議所にはあります。この組織の環境を存分に活かし、会員各々がリーダーとしての素養を身につけなければなりません。

私が描くリーダー像とは、何事に対しても自らが率先して行動する強い意志と健全な公共心を併せ持ち地域や企業を牽引できる資質を備えた者だと考えます。青年会議所を卒業された先輩の多くが、地域の各界各層を牽引するリーダーとしてご活躍されています。その紛れもない事実こそが、高い目標や困難から目を背けず前向きな気持ちで何事にも挑戦する青年会議所での経験の賜物であることを物語っているのではないでしょうか。今を生きる私たちも、掲げた目標の達成に向け果敢に挑む精神性を養い、そして絶えず実践し続けていくことで、地域から必要とされる人材へと成長しなければなりません。さらに、青年経済人としての観点からも地域社会の発展を考え、他者に先駆けて能動的に行動を起こす人材へと成長しなければなりません。そのためには、会員一人ひとりが地域の未来の原動力となるべく、まずは青年会議所に対する理解を深め何事にも果敢に挑戦するJAYCEEとなることで、愛する地域をより一層の飛躍へと導くことができると確信しています。

そして、会員が日々の活動を通じて学び得た力を互いに共有し高め合い、それぞれが持つ力を戮力協心で青年会議所運動に転換し、地域の持続的な発展を目指し未来へ向け歩みを進めます。

共に歩む仲間づくり

私たちは、明るい豊かな社会の実現を目指し日々運動を展開しています。明日の鹿島を少しでもより良い社会にしていきたい、その純粋な想いを胸に活動しています。そして、その私たちの活動において欠かすことができない最も大切なものとは仲間の存在です。一人でも多くの想いを一つに集め、共に行動する仲間がいれば青年会議所としての運動を効果的に行うことができます。市民の皆様の共感を得る運動を行うためには、まずは私たちと理念を共有する心強い仲間づくりこそが必要不可欠です。そのためには、青年会議所の魅力を自らの言葉で熱く語り、その想いで相手の心を揺さぶらなければなりません。そして、より多くの共感を呼び仲間を集めることで、地域の潜在的なニーズをより幅広く捉えることができるのです。会員拡大に対する意識を常に持ち、率先して行動できるよう会員一人ひとりの意識を一層高めていきます。さらに、新しい仲間を迎えるに相応しい組織であるためには、私たち自身も日々の研鑽を怠ってはなりません。私たち、会員一人ひとりの日常的な姿勢こそが青年会議所への興味や関心を喚起する契機となるのです。そして、新たな仲間との一つ一つの大切な出会いは、私たちにさらなる成長をもたらしてかけがえのない財産となっていきます。仲間の数だけ個性と個性が掛け合わさることで、組織としての魅力は無限に増幅し、力強い運動展開へとつながっていくのです。また、組織としての次の節目である創立65周年時までに、12名の会員が卒業を迎えます。この側面からも私たち鹿島青年会議所が持続的に運動を展開していくためには、新たな人材を迎え入れていくことが急務です。戮力協心の精神で会員拡大に取り組み、新たな同志と共に未来へ向け歩みを進めます。

人と故郷の魅力を未来へつなぐ

私たちが住み暮らす鹿島には未来へ継承すべき伝統ある継続事業があります。旭ヶ岡公園で鹿島市の花である桜の保全活動を行う「鹿島市桜樹保存会」、ラムサール条約登録湿地である肥前鹿島干潟の魅力を活かした「鹿島ガタリンピック」、鹿島市を襲った大水害からの復興を願い始まった「鹿島おどり」。いずれの事業も市民に笑顔を与えて活力を生み出すべく、先人達が築き受け継がれてきた素晴らしい事業です。その創始の精神を受け継ぎ、未来に目を向け故郷の魅力を次代につないでいくために戮力協心の精神性をもって会員一丸となって参画します。また、継続事業への参画は故郷の歴史をより深く学べる機会であり、各団体間や市民の皆様との交流を通しての様々な活動から多くの学びを得ることができます。そして、より多くの市民と共に相互理解を促進させることで、継続事業に携わる一人ひとりの地域に対する想いがさらに深まり、愛郷心が育まれ地域の活性化へとつながっていくのです。私たち鹿島青年会議所は、継続事業への参画を通して人と故郷の活力を高め、鹿島の持続的な発展を目指し未来へ向け歩みを進めます。

出向の推進並びに各種大会への積極的な参加

出向は全ての青年会議所会員に平等に与えられた貴重な機会の一つです。出向を通じて他LOMの会員との交流が生まれ、他の地域に関する知識が身に着くだけでなく、より多くの自己研鑽を積むことができます。さらに、多くの出会いによって多種多様な価値観に触れる機会を得ることができます。そして、同じ目標に向って力を合わせ、時には叱咤激励を交わしながら互いの知恵を振り絞って共に歩み、LOMでは経験できないスケールの事業に携わることもできます。出向での出会いや経験が自らに多くの気づきと学びを与えてくれるのです。私も入会以降、多くの出向の機会に触れ、その中でかけがえのない出会いや多くの学びを頂きました。私自身の経験からも、出向を自己成長の学びの機会として捉え積極的に挑戦することで自らが成長し、新たな自分と出会うことができると断言します。また、出向と同様に成長の機会の一つである各種大会へ参加することも、新たな学びを得るだけでなく、同じ志を持つ仲間との友情を育むことができる絶好の機会です。そして、出向や各種大会で得た多くの学びは個人に留まることなくLOMへと還元されることで、自ずと鹿島青年会議所の組織力向上へとつながります。出向や各種大会へ積極的に参加し多種多様な価値観に触れ、自らの成長を促し未来へ向け歩みを進めましょう。

結びに

時代は滞留することなく常に動いており、それに合わせて地域や人も変化し続けなければなりません。私たちJAYCEEも、常に時代の潮流を読み解き潜在的なニーズに敏感でなければなりません。しかし、いつの時代においてもそうであったように、創始の精神や理念は変わることなく、地域社会の先頭に立って明るい豊かな社会実現に向けて走り続けなければなりません。時代のうねりの中、どの様な困難にも立ち止まることなく、強い意志と結束力で立ちはだかる壁を越えずして夢や理想を実現することはできません。何事にも積極果敢に挑戦するJAYCEEが集う私たち鹿島青年会議所は、これからも地域の未来に心を寄せて戮力協心で誰よりも率先して行動していきます。創立から60周年を迎え、次のステージへ向けて新たな一歩を踏み出した今、さらなる勇気と信念を胸に希望に満ちた未来の実現に向け邁進いたします。

《基本方針》



2018年度理事長所信